「自分の基礎代謝は平均と比べてどうなの?」「年齢とともに下がるって本当?」「筋肉をつければ基礎代謝は上がる?」。こうした疑問は、ダイエットや健康管理を考えるときによく出てきます。
この記事では、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」の表と、海外の論文(PubMedで抄録・本文を確認したもの)をもとに、基礎代謝の目安、計算方法、年齢・筋肉・減量でどれくらい変わるのかを数字で整理しました。研究の強さも、主張ごとにラベルで示しています。
基礎代謝とは
基礎代謝量とは、目が覚めている状態で、生きていくのに最低限必要なエネルギーのことです。参考 食事摂取基準では「覚醒状態で必要な最小限のエネルギー」と説明され、早朝の空腹時に、快適な室温のもとで、あお向けに横になって安静にした状態(目は覚めている)で測ったものが基礎代謝量になるとされています[1]。
1日に使うエネルギー(総消費エネルギー)は、この基礎代謝に、体を動かすことで使う分などが加わったものです。参考 二重標識水法(特殊な水を飲んで、生活の中で使ったエネルギーを測る方法)を使った大規模な研究の論文では、基礎代謝は総消費エネルギーのおおむね50〜70%を占めると説明されています[3]。
基礎代謝の平均(年代・性別の目安)
日本人の基礎代謝の目安としてよく使われるのが、食事摂取基準の「基礎代謝基準値」です。参考 これは、1980年以降に日本で測定された50の研究の結果から、体重1kgあたりの基礎代謝量(kcal/kg体重/日)を性・年齢区分ごとにまとめた値です[1]。この値に、その年代の参照体重(日本人の平均的な体重として資料で使われている体重)を掛けたものが、下の表の右側の「参照体重の場合の基礎代謝量」です[1]。
いわゆる「基礎代謝の平均」を知りたいときは、この表の右側の列が目安になります。
| 年齢 | 男性 | 女性 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 基礎代謝基準値 (kcal/kg体重/日) | 参照体重 (kg) | 参照体重の場合の基礎代謝量 (kcal/日) | 基礎代謝基準値 (kcal/kg体重/日) | 参照体重 (kg) | 参照体重の場合の基礎代謝量 (kcal/日) | |
| 18〜29歳 | 23.7 | 63.0 | 1,490 | 22.1 | 51.0 | 1,130 |
| 30〜49歳 | 22.5 | 70.0 | 1,570 | 21.9 | 53.3 | 1,170 |
| 50〜64歳 | 21.8 | 69.1 | 1,510 | 20.7 | 54.0 | 1,120 |
| 65〜74歳 | 21.6 | 64.4 | 1,390 | 20.7 | 52.6 | 1,090 |
| 75歳以上 | 21.5 | 61.0 | 1,310 | 20.7 | 49.3 | 1,020 |
出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 エネルギー 表3「基礎代謝量基準値」より成人の区分を抜粋[1]。正誤表(令和7年3月25日)でこの表の見出しの用語が修正されていますが、数値に修正はありません[2]。
表の数字は「その年代の参照体重の人なら、このくらい」という目安です。体重が参照体重と違えば基礎代謝量も変わるため、自分の目安を知るには、次の計算方法を使います。
基礎代謝の計算方法と計算例
方法1:基礎代謝基準値×自分の体重
いちばん簡単なのは、上の表の「基礎代謝基準値」に自分の体重を掛ける方法です。
基礎代謝量(kcal/日)= 基礎代謝基準値(kcal/kg体重/日)× 体重(kg)
計算例(編集部計算):
- 40歳・女性・体重60kgの場合:21.9 × 60 = 約1,310kcal/日(1,314kcal)
- 40歳・男性・体重70kgの場合:22.5 × 70 = 約1,580kcal/日(1,575kcal)
参考 ただし食事摂取基準は、この方法を「参照体重から大きく外れた個人や集団に使う場合には注意が必要」としています[1]。体重が参照体重より大きく重い・軽い場合は、計算結果と実際の値がずれやすいと考えておきましょう。
方法2:身長・体重・年齢を使う推定式
参考 食事摂取基準には、主な基礎代謝の推定式もまとめられています。そのうち日本人のデータから作られた「国立健康・栄養研究所の式」は次のとおりです(W:体重kg、H:身長cm、A:年齢)。この式は20〜74歳を対象とした式で、妥当性が確かめられている年齢幅は18〜79歳とされています[1]。
- 男性:(0.0481×W + 0.0234×H − 0.0138×A − 0.4235)× 1,000 ÷ 4.186
- 女性:(0.0481×W + 0.0234×H − 0.0138×A − 0.9708)× 1,000 ÷ 4.186
計算例(編集部計算):
- 40歳・女性・身長160cm・体重60kg:(2.886 + 3.744 − 0.552 − 0.9708)× 1,000 ÷ 4.186 = 約1,220kcal/日
- 40歳・男性・身長170cm・体重70kg:(3.367 + 3.978 − 0.552 − 0.4235)× 1,000 ÷ 4.186 = 約1,520kcal/日
同じ人でも、方法1と方法2で数十kcalほど結果が違います。どちらも「推定」なので、ぴったり一致しないのはふつうのことです。
1日に必要なエネルギーの目安へのつなげ方
参考 食事摂取基準では、成人の1日に必要なエネルギーの目安(推定エネルギー必要量)を「基礎代謝量基準値×参照体重×身体活動レベル」で求めています[1]。身体活動レベルは、18〜64歳では「低い」1.50、「ふつう」1.75、「高い」2.00です[1]。「ふつう」は、座って過ごす仕事が中心でも、職場内の移動や立って行う作業・接客、通勤・買い物での歩行、家事、軽いスポーツのいずれかを含む場合とされています[1]。
計算例(編集部計算):先ほどの40歳・女性・体重60kg(基礎代謝 約1,310kcal)で、身体活動レベルが「ふつう」なら、1,314 × 1.75 = 約2,300kcal/日が目安になります。
計算した値は「目安」と考える理由
計算で出した数字は便利ですが、そのまま「自分の正しい値」と考えないことが大切です。食事摂取基準自身が、次のような限界を説明しています。
- 参考 体の中身の違い:同じ体重でも、体の組成(脂肪や筋肉の割合など)が違えば基礎代謝量は異なると考えられ、その影響の詳細はまだ明らかでないとされています[1]。
- 参考 個人差:性・年齢・身長・体重・身体活動レベルが同じでも、必要なエネルギーには個人差があります。アメリカ・カナダの推定式では、その標準偏差は成人男性で±199kcal/日、成人女性で±164kcal/日と推定されており、この幅に入る人は全体の約68%(7割弱)にすぎないと紹介されています[1]。
- 参考 確かめ方:そのため、エネルギーの過不足を判断するには、推定エネルギー必要量ではなく体重の変化(1回しか測れない場合はBMIなどの体格の指数)を使うことが望ましいとされています[1]。
体重計に表示される「基礎代謝」も、多くは測定値をもとにした推定です。数字は「だいたいの目安」として使い、実際には数週間〜数か月の体重の動きを見て調整するのが現実的です。体重の上下の見方は「痩せない原因は?見直したい7つのポイント」でくわしく紹介しています。
年齢で基礎代謝はどう変わる?
上の表を見ると、参照体重の場合の基礎代謝量は、男性では30〜49歳の1,570kcalから75歳以上の1,310kcalへ、女性では30〜49歳の1,170kcalから75歳以上の1,020kcalへと、年代が上がるにつれて少なくなっています[1]。参考 体重1kgあたりの基準値も、男性は18〜29歳の23.7から75歳以上の21.5へ、女性は18〜29歳の22.1から50歳以上の20.7へと下がっています[1]。
では、「30代・40代になると基礎代謝がガクッと下がる」のでしょうか。これについては、2021年に科学誌Scienceに発表された大規模な研究があります。
根拠:弱い 世界各地の生後8日〜95歳の6,421人について、二重標識水法で測った1日の総消費エネルギー(うち2,008人は基礎代謝も測定)を集めて分析した研究です[3]。体の大きさ(除脂肪量=体重から脂肪を除いた筋肉・骨・内臓などの重さ、と脂肪量)の違いをそろえて比べたところ、次のような結果でした[3]。
- 20〜60歳:総消費エネルギー・基礎代謝・除脂肪量は、いずれもほぼ一定だった
- 60歳ごろから:総消費エネルギーと基礎代謝が下がり始め、体の大きさをそろえた総消費エネルギーは1年あたり約0.7%ずつ低下し、基礎代謝も同じくらいの割合で下がっていた
- 90代:体の大きさをそろえた総消費エネルギーは、中年の大人より約26%低かった
なお、この研究でも、体の大きさをそろえた基礎代謝が下がり始める年齢は総消費エネルギーよりやや早い46.5歳と推定されましたが、45〜65歳の基礎代謝の測定数が少ないため、この年齢の推定の精度は低いと著者ら自身が述べています[3]。さまざまな年齢の人のデータを比べた観察研究であり、同じ人を何十年も追いかけたものではない点にも注意が必要です。
まとめると、「中年になると代謝が急に落ちる」というより、体重・筋肉量・活動量の変化の影響が大きく、60歳を過ぎるとゆるやかに下がるというのが、現時点で示されている傾向です。
筋肉を増やすと基礎代謝はどれくらい変わる?
「筋肉をつけると基礎代謝が増える」という話はよく聞きますが、その大きさを知っておくと、期待しすぎずにすみます。
参考 臓器・組織ごとに、安静時に1kgあたりどれくらいのエネルギーを使うかを示した値(Eliaの値)があります。それによると、1kgあたり1日に、肝臓200kcal、脳240kcal、心臓と腎臓440kcalに対して、骨格筋は13kcal、脂肪組織は4.5kcalとされています[4]。成人131人の体を MRI で測った研究では、この値は21〜50歳ではおおむね当てはまり、50歳を超える人では3%ほど高めに見積もっていた(骨格筋で12.6kcal)と報告されています[4]。
計算例(編集部計算):この値をそのまま使うと、筋肉が1kg増えたときの基礎代謝の増え方は1日約13kcal、2kg増えても約26kcalです。脂肪1kgが筋肉1kgに置き換わったと考えても、差は1日8.5kcalほど(13 − 4.5)です。筋肉の量だけで見ると、基礎代謝への影響は思ったより小さいことがわかります。
根拠:強い 一方、運動を続けたときの安静時代謝量(安静にしているときのエネルギー消費量。基礎代謝に近い指標)の変化を調べた研究をまとめた分析があります。65歳以上の人や病気のある人などを除いた研究を集めた結果、筋トレ(レジスタンス運動)を行ったグループは、行わなかったグループに比べて安静時代謝量が1日平均約96kcal多かった(95%信頼区間:約45〜147kcal)と報告されています[5]。有酸素運動では、はっきりした差は見られませんでした(平均約82kcal、統計的に意味のある差ではない)[5]。ただし著者ら自身が、研究ごとに測り方がばらばらで、偏り(バイアス)のリスクが高い研究が含まれていると述べています[5]。
つまり、筋トレで安静時のエネルギー消費が増える可能性は示されていますが、その大きさは1日あたり数十〜100kcal程度の範囲で、研究の質にも限界があります。「筋肉をつければ食べても太らない」といった大きな変化を期待するより、筋肉や体力を保つこと自体を目的に続けるのが現実的です。筋トレと有酸素運動の違いは「有酸素運動と筋トレ、減量にはどっち?」、筋肉づくりに関わるタンパク質の目安は「タンパク質は1日どれくらい必要?」、体の中身(脂肪の割合)の目安は「体脂肪率の目安」で解説しています。
減量すると基礎代謝は下がる
体重が減ると、体を維持するのに使うエネルギーも少なくなります。基礎代謝基準値が「体重1kgあたり」で示されていることからもわかるように、体重が減れば計算上の基礎代謝量も減ります[1]。計算例(編集部計算):40歳女性の基準値21.9で計算すると、体重60kgでは約1,310kcal、55kgでは約1,200kcal(1,204.5kcal)と、5kg減で1日約110kcal少なくなります。
さらに、減量のあとには、体の組成の変化から予想される以上に消費エネルギーが下がることがあります。参考 アメリカのテレビ番組の減量コンテストに参加した14人を6年間追った研究では、30週間のコンテスト終了時に体重が平均58.3kg減り、安静時代謝量は1日平均610kcal低下していました。6年後には減った体重のうち平均41.0kgが戻っていたにもかかわらず、安静時代謝量は開始時より1日平均704kcal低いままで、体の組成と年齢の変化を考えに入れても1日約499kcal低い状態(代謝の適応)が続いていました[6]。
これは非常に大きく、急な減量をした14人の結果なので、一般的な減量にそのまま当てはまるわけではありません。ただ、「減量が進むと、同じ食事量でも減りにくくなる」ことの背景のひとつと考えられます。減量中に体重が減りにくくなったときの見直し方は「痩せない原因は?見直したい7つのポイント」の「ポイント2」でくわしく扱っています。
医療機関に相談したい目安
出典・注意書き
基準日:2026年10月時点
- 厚生労働省.「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 各論 1-1 エネルギー(2-3-1 基礎代謝量基準値・表2・表3、2-3-2 身体活動レベル・表4・表5、3 推定エネルギー必要量、4-2 体格の影響、4-3 個人間差、4-5 活用上の注意). 2024. https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316461.pdf(報告書の一覧:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html)
- 厚生労働省.「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 正誤表(令和7年3月25日). https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316480.pdf
- Pontzer H, et al. Daily energy expenditure through the human life course. Science. 2021. PMID: 34385400 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34385400/(本文:https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8370708/)
- Wang Z, et al. Specific metabolic rates of major organs and tissues across adulthood: evaluation by mechanistic model of resting energy expenditure. Am J Clin Nutr. 2010. PMID: 20962155 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20962155/
- MacKenzie-Shalders K, et al. The effect of exercise interventions on resting metabolic rate: A systematic review and meta-analysis. J Sports Sci. 2020. PMID: 32397898 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32397898/
- Fothergill E, et al. Persistent metabolic adaptation 6 years after "The Biggest Loser" competition. Obesity (Silver Spring). 2016. PMID: 27136388 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27136388/
- 厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル 甲状腺機能低下症」(平成21年5月) https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1d09.pdf
※「編集部計算」と書いた数字は、出典の数値をもとに編集部が計算したもので、出典に直接書かれている値ではありません。
根拠の強さの表示:強い=複数の研究をまとめた分析・診療ガイドライン/中くらい=ランダム化比較試験/弱い=観察研究/参考=公的資料の目安・専門家の意見など。詳しくはこちら
ご注意
- この記事は一般的な健康情報で、診断や治療に代わるものではありません。持病のある方・治療中の方・妊娠中の方は、主治医にご相談ください。
- 基礎代謝の計算値・表の値は推定の目安で、実際の値には個人差があります。食事量の調整は、体重の変化を見ながら行ってください。
- 極端な食事制限は、体調をくずす原因になることがあります。減量の進め方に不安がある場合は、医師や管理栄養士にご相談ください。
- 紹介した研究の数字は、それぞれの研究の対象者・条件での結果で、どなたにも同じ結果が出るとは限りません。