「体重を減らしたいなら有酸素運動?それとも筋トレ?」という疑問に、研究の結果で答えます。この記事では「体重」「体脂肪」「筋肉量」の3つを分けて比べ、ランダム化比較試験(くじ引きでグループを分けて比べる研究)、複数の研究をまとめた分析、厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」、WHO(世界保健機関)の2020年の指針を確認しました。
まず「体重・体脂肪・筋肉量」を分けて考える
「減量」というと体重計の数字だけを見がちですが、体重は大まかに「体脂肪」と「それ以外(筋肉・骨・水分など。研究では除脂肪量と呼びます)」の合計です。そのため、次のようなことが起こりえます。
- 体脂肪が減っても、筋肉が増えると体重はあまり変わらない
- 体重が減っても、その一部が筋肉の減少だった
有酸素運動(ウォーキング・ジョギング・自転車など、息が上がる程度に長く続ける運動)と筋トレ(筋肉に負荷をかける運動。研究ではレジスタンストレーニングと呼びます)は、この3つへの影響の出方がちがいます。以下では、何を目標にするかで答えが変わることを、研究の数字で見ていきます。
同じ人たちで3つの運動を比べた研究(STRRIDE AT/RT)
有酸素運動と筋トレを直接比べた代表的な研究に、アメリカで行われた「STRRIDE AT/RT」があります[1]。根拠:中くらい 運動習慣のない、太りぎみ〜肥満の成人をくじ引きで3グループに分け、8か月間運動してもらいました。
- 有酸素運動グループ:週に約12マイル(約19km)のジョギングに相当する量を、ややきつい強度で(予定は週あたり約134分)
- 筋トレグループ:週3日、1日3セット、1セット8〜12回(予定は週あたり約180分)
- 組み合わせグループ:上の2つを両方
体の組成(体脂肪や筋肉の量)をきちんと測れた119人の結果が次の表です。数字は8か月間の平均の変化です。
| グループ | 体重 | 体脂肪 | 除脂肪量(筋肉など) | 予定した運動時間 |
|---|---|---|---|---|
| 有酸素運動(38人) | −1.76kg | −1.66kg | −0.10kg(ほぼ変化なし) | 週 約134分 |
| 筋トレ(44人) | +0.83kg | −0.26kg(はっきりした変化なし) | +1.09kg | 週 約180分 |
| 組み合わせ(37人) | −1.63kg | −2.44kg | +0.81kg | 週 約314分 |
出典:Willis et al. 2012[1] の表から作成。組み合わせグループの時間は、有酸素運動と筋トレの予定時間の合計です。
この研究からわかることは3つです。
- 体重と体脂肪:有酸素運動と組み合わせのグループは、筋トレだけのグループより体重・体脂肪が多く減りました。有酸素運動と組み合わせのあいだには、統計的にはっきりした差はありませんでした。
- 筋肉量:筋トレを含む2グループ(筋トレ・組み合わせ)は、有酸素運動だけのグループより除脂肪量が増えました。
- 体重計の数字:筋トレだけのグループは、体重がわずかに増えました。筋肉などが約1kg増えたためで、体重計だけでは運動の成果を正しく判断できない例といえます。
著者らは、時間の負担も考えると体脂肪と体重を減らすには有酸素運動が向いており、筋肉量を増やすには筋トレを含む運動が必要だとまとめています[1]。ただし、これは1つの研究で、対象は中年の太りぎみ〜肥満のアメリカ人です。体重の変化も平均で2kg前後と、大きくはない点に注意が必要です。
たくさんの研究をまとめた分析では?
筋トレの研究114件のまとめ
根拠:強い 太りぎみ・肥満の人を対象にした筋トレのランダム化比較試験114件(合計4,184人)をまとめたメタ分析(複数の研究の結果を統計的に合わせる方法)があります[2]。運動をしないグループと比べた結果は次のとおりでした。
- 筋トレだけ:体脂肪量 −1.0kg、除脂肪量 +0.8kg(筋肉を増やす方向では、比べた方法の中でいちばん大きい)
- 筋トレ+有酸素運動:体脂肪量 −1.4kg
- 筋トレ+食事のカロリー制限:体脂肪量 −5.3kg。除脂肪量ははっきりした変化がなく、保たれていた
筋トレだけでも体脂肪は減ったものの、その量は小さめでした。体脂肪がいちばん大きく減ったのは食事の見直しと組み合わせたときで、そのとき筋トレには「減量中に筋肉を落としにくくする」役割が期待できる、というのがこの分析の示すところです。
運動の種類を横並びで比べた分析
根拠:強い 肥満の成人を対象にしたランダム化比較試験45件(合計3,566人)で、さまざまな運動の種類を比べたネットワークメタ分析(直接比べていない方法どうしも間接的に比べる分析)もあります[3]。結果は次のとおりです。
- どの種類の運動も、運動しない場合より良い結果だったが、運動で減った体重は「控えめ(modest)」だった
- 強めの有酸素運動と、重めの負荷の筋トレを組み合わせた運動が、おなかまわりの脂肪を減らす・除脂肪量を増やす・持久力を高める点で、ほかの種類より良い結果だった
つまり「どっちか一方」より「両方」のほうが、体の組成と体力を全体的に良くする方向だったと報告されています。ただし、ここでいう「強め」「重め」は研究ごとに条件がちがうため、運動に慣れていない人がいきなり同じ強さで始めるのはおすすめしません(始め方は後半で説明します)。
運動だけの減量は小さめ。食事との関係
ここまでの研究で、運動による体重の変化が数kg程度だったことに気づいたかもしれません。実際、運動だけによる減量は小さめだという結果が、複数の研究のまとめで示されています。
根拠:強い コクランレビュー(信頼性の高い系統的レビューを作る国際的な団体のまとめ)では、太りぎみ・肥満の人を対象にした43件の研究(合計3,476人)を分析しています[4]。
- 何もしない場合と比べ、運動による体重の減少は「小さい」ものだった
- 運動と食事の見直しを組み合わせると、食事の見直しだけより体重が約1kg多く減った
- 運動の強度を上げると、体重の減少が約1.5kg大きかった
- 運動だけでも、拡張期血圧(下の血圧)・中性脂肪・空腹時血糖が下がっていた。著者らは、体重が減らなくても運動は心臓や血管の病気の危険因子の改善と関係していると結論づけています
根拠:強い また、1年以上追跡したランダム化比較試験8件(合計1,022人)を比べた系統的レビューでは、次の結果でした[5]。
- 「食事+運動」のプログラムは「運動だけ」のプログラムより、3〜6か月時点で約5.3kg、12〜18か月時点で約6.3kg多く体重が減った
- 「食事+運動」と「食事だけ」は、3〜6か月時点でははっきりした差がなかったが、12か月時点では「食事+運動」のほうが約1.7kg多く減った
まとめると、体重を減らすことが目的なら、運動の種類を選ぶ前に「食事の見直し」が土台になると考えるのが研究に沿った見方です。運動は、体重の減少を後押しし、長く続けたときの差につながり、体重とは別に血圧や血糖などにも良い変化が報告されている、という位置づけです。
厚労省とWHOのおすすめ
根拠:強い 公的な指針はどちらも、有酸素運動か筋トレかの二択ではなく、両方を取り入れることをすすめています。
厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」(成人)
成人向けの推奨シートには、次のように書かれています[7]。
- 歩行またはそれと同じくらい以上の強さの身体活動を、1日60分以上(1日約8,000歩以上に相当)
- 息が弾み汗をかく程度の運動を、週60分以上
- 筋力トレーニングを週2〜3日(上の「週60分」の運動に含めてもよい)
- 座りっぱなしの時間が長くなりすぎないように注意する
- 個人差をふまえて強さや量を調整し、できるものから取り組む。今よりも少しでも多く体を動かす
WHO「身体活動・座位行動ガイドライン」2020年版(成人)
WHOの指針では、成人は次のことが推奨されています[8]。
- 中くらいの強さの有酸素運動を週150〜300分、または強めの有酸素運動を週75〜150分(組み合わせてもよい)
- 主な筋肉をまんべんなく使う筋トレを、中くらい以上の強さで週2日以上
- 座っている時間を減らし、軽い動きでもよいので体を動かす時間に置きかえる
これらは「減量」だけでなく、病気の予防や体力など健康全体のための目安です。どちらの指針も、有酸素の活動と筋トレの「両方」を前提にしている点が共通しています。
筋トレが先?有酸素が先?
「筋トレを先にしてから有酸素運動をすると、体脂肪が減りやすい」という話をよく見かけます。しかし、体脂肪への影響について、この順番を支持する根拠は限られます。
根拠:強い 同じ日に両方を行う場合の順番を比べた10件の研究をまとめたメタ分析では、筋トレを先にすると下半身の筋力の伸びがやや大きかった一方、体脂肪率や持久力(最大酸素摂取量)には順番による差は見られませんでした[6]。対象は健康な成人で、研究の数も多くないため、肥満の人の減量にそのまま当てはまるかは分かっていません。
現時点では「体脂肪を減らすための最適な順番」ははっきりしていません。筋力を伸ばしたい人は筋トレを先にする考え方もありますが、減量が目的なら、順番より「続けられるかどうか」「全体の量」を優先するのが現実的です。
組み合わせ方と、初心者の始め方
目的別のざっくりした考え方
| 目的 | 研究から見た考え方 | 主な根拠 |
|---|---|---|
| 体重を減らしたい | 食事の見直しを土台に、有酸素の活動を足す | [1][4][5] |
| 体脂肪を減らしたい | 有酸素運動、または有酸素+筋トレの組み合わせ | [1][2][3] |
| 筋肉を増やしたい・減量中に筋肉を落としにくくしたい | 筋トレを含める | [1][2] |
| 健康全体(血圧・血糖・体力など) | 有酸素の活動+筋トレ週2〜3日(公的な推奨) | [4][7][8] |
どの目的でも、有酸素の活動と筋トレのどちらか一方だけに決める必要はありません。研究と指針を合わせると、「両方を少しずつ、続けられる量で」が無理のない答えになります。
初心者の始め方(公的な目安をもとにした例)
参考 以下は、厚労省の推奨[7]をもとに編集部が組み立てた一例です。特定の研究で効果を確かめたメニューではありません。
- まずは今より少し多く歩く:いきなり1日8,000歩をめざさず、今の歩数や運動時間から少しずつ増やします。通勤で1駅分歩く、階段を使うなど、日常の動きも身体活動に入ります。
- 週2日、自分の体重を使った筋トレを入れる:スクワット、壁や台に手をついた腕立て伏せなど、主な筋肉(脚・お尻・胸・背中など)を使う動きを、無理のない回数から。連続した日でなく、間をあけると続けやすくなります。
- 慣れてきたら「息が弾む運動」を足す:早歩き、軽いジョギング、自転車などで、週60分を目安に分けて行います。
- 座りっぱなしを減らす:長く座るときは、ときどき立ち上がって体を動かします。
- 食事の見直しとセットにする:体重を減らしたい場合は、運動だけに頼らず、食べる量や内容の見直しと組み合わせます。
体重計の数字は、筋肉が増えると減りにくく見えることがあります(STRRIDE AT/RTの筋トレグループの例[1])。体重だけでなく、腹囲や体力の変化なども合わせて見ると、運動の成果を判断しやすくなります。
医療機関に相談したい目安
- 心臓病・高血圧・糖尿病・腎臓病などの持病があり、治療中または薬を飲んでいる
- 運動中や運動後に、胸の痛み・しめつけ感、強い息切れ、動悸、めまい、ふらつきが出る
- ひざ・腰・肩などの関節の痛みが続く、または運動で悪くなる
- 長いあいだ運動をしていなかった中高年の人が、強めの運動を始めようとしている
- 妊娠中・産後である
- 食事を見直していないのに、体重が短期間で大きく減った(運動以外の原因がないか確認するため)
出典・注意書き
基準日:2026年10月時点
- Willis LH, et al. Effects of aerobic and/or resistance training on body mass and fat mass in overweight or obese adults. J Appl Physiol. 2012. PMID: 23019316 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23019316/(全文:https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3544497/)
- Lopez P, et al. Resistance training effectiveness on body composition and body weight outcomes in individuals with overweight and obesity across the lifespan: A systematic review and meta-analysis. Obes Rev. 2022. PMID: 35191588 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35191588/
- O'Donoghue G, et al. What exercise prescription is optimal to improve body composition and cardiorespiratory fitness in adults living with obesity? A network meta-analysis. Obes Rev. 2021. PMID: 32896055 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32896055/
- Shaw K, et al. Exercise for overweight or obesity. Cochrane Database Syst Rev. 2006. PMID: 17054187 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17054187/
- Johns DJ, et al. Diet or exercise interventions vs combined behavioral weight management programs: a systematic review and meta-analysis of direct comparisons. J Acad Nutr Diet. 2014. PMID: 25257365 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25257365/
- Eddens L, et al. The Role of Intra-Session Exercise Sequence in the Interference Effect: A Systematic Review with Meta-Analysis. Sports Med. 2018. PMID: 28917030 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28917030/
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」推奨シート:成人版(e-ヘルスネット) https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/exercise/s-00-002.html
- Bull FC, et al. World Health Organization 2020 guidelines on physical activity and sedentary behaviour. Br J Sports Med. 2020. PMID: 33239350 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33239350/
根拠の強さの表示:強い=複数の研究をまとめた分析・診療ガイドライン/中くらい=ランダム化比較試験/弱い=観察研究/参考=公的資料の目安・専門家の意見など。詳しくはこちら
ご注意
- この記事は一般的な健康情報で、診断や治療に代わるものではありません。持病のある方・治療中の方・妊娠中の方は、主治医にご相談ください。
- 紹介した研究の数字は、対象者・期間・運動の内容がそれぞれ決まった条件での平均値です。同じ運動をしても、結果には個人差があります。
- 運動中に体調の異変を感じたら、すぐに中止してください。