「昼寝は何分がいいの?」「何時までなら夜に響かない?」。昼寝の時間には、さまざまな説があります。この記事では、厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」[1]とその前の「健康づくりのための睡眠指針2014」[2]、昼寝の効果を調べた論文(PubMed)をもとに、分かっていることと、まだはっきりしないことを分けて整理しました。
短い昼寝で、何が変わる?
まずは「昼寝をすると、その後の頭の働きは変わるのか」という研究から見ていきます。
根拠:強い 午後の昼寝の効果を調べた54件の研究(60グループ)をまとめた分析では、昼寝をした場合、しなかった場合と比べて、認知機能(記憶・注意・判断などの頭の働き)のテスト全体で成績が上がっていました。効果の大きさは「小〜中程度」とされ、分野別では、覚えたことの記憶、体で覚える技能の記憶、注意を保つ力(覚醒度)、処理の速さで差がみられました[3]。
根拠:強い 働く世代の成人を対象にした11件の研究(381人)をまとめた別の分析でも、昼寝のあとに認知機能の成績が上がり、とくに覚醒度(眠気が少なく、しっかり起きていられる状態)で差が大きかったと報告されています。成績の向上は主に昼寝後120分までみられました[4]。
ただし、この分析に含まれた研究はほぼすべて実験室で行われたもので、著者らは「実際の職場での研究がもっと必要」としています[4]。「昼寝をすれば仕事の成果が上がる」とまでは言えない、という点は押さえておきましょう。
参考 厚生労働省の以前の睡眠指針(2014年)も、毎日十分に眠ることが基本としたうえで、夜に必要な睡眠時間がとれなかった場合に、午後の眠気による仕事の問題に昼寝が役立つとしていました[2]。昼寝は、あくまで夜の睡眠の「代わり」ではなく「補助」という位置づけです。
何分がいい?研究ごとの結果
「何分がベストか」は、研究によって結果が分かれています。ここは正直に、研究ごとに並べます。
| 資料・研究 | 昼寝の長さについて分かったこと | 根拠の強さ |
|---|---|---|
| 厚生労働省「睡眠指針2014」[2] | 午後の早い時刻に30分以内の短い昼寝が、眠気による作業能率の低下に役立つ。長く寝すぎると目覚めの悪さが出るため30分以内が望ましい | 参考(公的資料の目安) |
| 午後の昼寝54件のまとめ[3] | 昼寝の長さによって効果の大きさに差はみられなかった | 強い |
| 働く世代の昼寝11件のまとめ[4] | 昼寝の長さは成績に影響していなかった(含まれた研究の昼寝は平均約55分) | 強い |
| 運動選手などの昼寝22件のまとめ[5] | 30分以上60分未満の昼寝で、効果がより大きかった(対象は18〜35歳の男性291人) | 強い(ただし対象が限られる) |
| 睡眠を約5時間に減らした翌日の実験[6] | 5・10・20・30分を比べ、10分がもっとも効果的だった。30分では起きた直後に一時的に注意力が下がった(24人) | 参考(少人数の単一研究) |
根拠:強い 運動選手と運動習慣のある男性を対象にしたランダム化比較試験22件のまとめでは、ふつうに眠った翌日でも、睡眠が足りなかった翌日でも、昼寝のあとに認知面・体力面の成績が上がり、疲れの感じ方が減りました。昼寝が30分以上60分未満で、起きてからテストまで1時間以上あいた場合に効果が大きかったとしています[5]。ただし対象は18〜35歳の男性だけなので、女性や中高年、デスクワークの人にそのまま当てはまるかは分かりません。
参考 一方、夜の睡眠を約5時間に減らした若い成人24人の実験では、10分の昼寝で、起きた直後から眠気・疲労感・作業成績が良くなり、一部は約155分後まで続きました。20分では効果が出始めるのが起きてから約35分後、30分では起きた直後に注意力や成績が一時的に落ちる時間(睡眠慣性)がありました。5分ではほとんど差がありませんでした[6]。少人数の単一の研究なので、これだけで「10分が正解」とは言えません。
ポイントは「起きた直後のぼんやり」
研究によって結果が分かれる理由の一つが、睡眠慣性(起きた直後に頭がぼんやりして、成績が一時的に下がる状態)です。昼寝が長くなると眠りが深くなり、この状態が出やすくなると考えられています。
参考 厚生労働省の睡眠ガイドは、夜勤中の仮眠について、0〜4時に始める20〜50分の仮眠は眠気・仕事の効率・疲労を改善させたという報告がある一方で、60分と長めの仮眠ではかえって仕事の効率が下がった研究があると紹介し、仮眠が長すぎると眠りが深まり、起きた後の強いぼんやり感が出やすいためと考えられる、としています[1]。
まとめると、「何分なら正解」という一つの答えはまだありません。そのうえで、起きてすぐ動きたい場面では短め(公的資料の目安では30分以内)にしておくと、睡眠慣性の影響を受けにくい、というのが現時点で無理のない考え方です。
何時までがいい?夜の睡眠への影響
「昼寝は15時まで」といった目安をよく見かけますが、今回確認した公的資料と論文の中には、特定の時刻で線を引く根拠となる研究は見当たりませんでした。分かっていることは次のとおりです。
- 参考 厚生労働省の以前の睡眠指針(2014年)は、「午後の早い時刻」に短い昼寝をすることを勧めていました[2]。
- 根拠:強い 現在の睡眠ガイド(2023年)は、高齢者向けの推奨として「長い昼寝は夜間の良眠を妨げるため、日中の長時間の昼寝は避け、活動的に過ごす」としています。また、長い昼寝を避ける工夫として、目覚ましをかける、同居している人に起こしてもらうことを挙げています[1]。
- 参考 同じガイドは、高齢世代では長い昼寝や回数の多い昼寝が、夜の睡眠の質の低下と関連すると紹介しています[1]。
- 参考 研究の例として、運動選手などを対象にした昼寝の試験は12時30分〜16時50分に行われ、14時ごろがもっとも多かったと報告されています[5](これは試験の設定で、「この時間が最適」と示したものではありません)。
つまり、時刻の線引きよりも、「午後の早めに」「短く」「夕方以降は長く寝ない」という考え方が、公的資料に沿った目安になります。夜に寝つけないと感じている方は、昼寝の長さや時刻を見直すとともに、眠れない原因と、まず試したいこともあわせて確認してみてください。
長い昼寝と健康の関連(観察研究)
「長い昼寝は体に悪い」という話も聞きます。ここは研究の種類に注意して読む必要があります。以下はすべて観察研究(人々の生活習慣を調べ、その後の病気や死亡と比べる研究)をまとめたものです。
| まとめた研究 | 昼寝をしない人と比べたリスク |
|---|---|
| 11件・約15万人(平均11年追跡)[9] | 1日60分以上の昼寝:心臓・血管の病気 1.82倍、死亡 1.27倍 60分未満の昼寝:どちらもはっきりした関連なし |
| 21件・約37万人[10] | 1時間以上の昼寝:死亡 1.22倍、心臓・血管の病気 1.37倍 1時間未満の昼寝:どちらもはっきりした関連なし |
| 12件・約13万人[11] | 昼寝をする人:死亡 1.22倍(心臓・血管の病気やがんによる死亡とは、はっきりした関連なし) |
根拠:弱い 1つ目の分析では、昼寝の時間と心臓・血管の病気の関係は「J字型」で、0〜30分までは少し下がり、約45分までは緩やかに上がり、それより長いと急に上がる形でした。著者らは、短い昼寝の効果を確かめるにはさらに研究が必要だとしています[9]。
根拠:弱い 厚生労働省の睡眠ガイドも、高齢世代で30分以上の昼寝を習慣にしている人は、昼寝の習慣がない人に比べて将来の死亡リスクが1.27倍だったという報告を紹介しています[1]。
大切なのは、これらが「関連」であって「原因」とは言えないことです。もともと体調が悪い人、睡眠時無呼吸などで夜の眠りが浅い人ほど、日中に長く眠ってしまう、という逆向きの関係も考えられます。3つ目の分析の著者らも、含まれた研究の数が限られ、偏りの可能性があるため慎重に解釈するよう述べています[11]。「長い昼寝をやめれば病気を防げる」とまでは言えませんが、「毎日1時間以上眠ってしまう」こと自体が、体の状態を見直すきっかけにはなりそうです。
カフェインと組み合わせる「コーヒー昼寝」
昼寝の直前にコーヒーを飲む「コーヒー昼寝(カフェインナップ)」という方法があります。カフェインが効き始めるころに目が覚めるので、起きた後のぼんやりを減らせる、という考え方です。
参考 若い成人10人の実験では、カフェイン200mgをとってから20分の昼寝をした場合が、昼寝だけ・昼寝後に明るい光を浴びる・昼寝後に顔を洗う、などの方法と比べて、眠気と作業成績の両方でもっとも良く、その効果は昼寝後1時間続きました[7]。
参考 眠気のある12人が運転シミュレーターで2時間運転した実験では、15分未満の昼寝とカフェイン200mgを組み合わせると、運転中の危ない場面(ミス)の回数が、偽薬(カフェインなし)のときの9%に減り、カフェインだけのとき(34%)より少なくなりました[8]。
参考 厚生労働省の睡眠ガイドも、夜勤中の仮眠について、コーヒーなどでカフェインをとってから仮眠を始めると、起きやすくなり、起きた後のぼんやりも起こりにくくなるという報告がある、と紹介しています[1]。
ただし、どれも少人数の研究です。また、同じガイドによると、日本人ではカフェインが体内で半分になるまでの時間(半減期)が3〜7時間とばらつきがあり、夕方以降のカフェインは夜の睡眠に影響しやすいとされています。1日の合計は400mg(ドリップコーヒーでカップ4杯分・約700cc)を超えないことが勧められています[1]。実験で使われた200mgは、この目安から計算するとドリップコーヒー約2杯分です。夜に眠りにくい方は、コーヒー昼寝は午後の早い時間だけにするか、控えたほうが無難です。妊娠中の方やカフェインに敏感な方は、主治医に相談してください。
昼寝を取り入れるときのポイント
ここまでの資料をもとに、昼寝を取り入れるときのポイントをまとめました。
| ポイント | 理由・根拠 |
|---|---|
| 長さは短め(目安30分以内) | 長くなると起きた直後のぼんやり(睡眠慣性)が出やすい[1][2] |
| 時刻は午後の早めに | 以前の睡眠指針が「午後の早い時刻」を勧めていた。長い昼寝は夜の眠りを妨げうる[1][2] |
| 目覚ましをかける | 寝すぎを防ぐ工夫として睡眠ガイドが挙げている[1] |
| 起きてすぐに大事な作業をしない | 長めに寝た場合、直後は一時的に成績が下がることがある[6] |
| 昼寝で睡眠不足を埋め続けない | 毎日十分に眠ることが基本で、昼寝は補助という位置づけ[2] |
昼寝が毎日欠かせないほど眠いなら、まずは夜の睡眠時間と質を見直すのが先です。厚生労働省の睡眠ガイドは、成人について6時間以上を目安に必要な睡眠時間を確保すること、寝室の環境を見直すことを勧めています[1]。寝室の環境を整える一つとして寝具を見直したい方は、マットレスの選び方と比較も参考にしてください。
医療機関に相談したい目安
- 夜に十分寝ているはずなのに、日中の強い眠気が続き、昼寝をしないと過ごせない
- 会議中や食事中、運転中など、眠ってはいけない場面で居眠りしてしまう・しそうになる(運転中の眠気がある場合はとくに早めに。眠気が強いときは運転を控える)
- 大きないびきや、眠っている間に呼吸が止まっていると家族などに言われた(閉塞性睡眠時無呼吸の可能性)
- 発作のように急に強い眠気が来て眠り込む、大笑いなど強い感情がきっかけで体の力が抜ける(ナルコレプシーなどの過眠症の可能性)
- 睡眠時間を増やすなど生活を見直しても、日中の眠気がよくならない
厚生労働省の睡眠ガイドは、日中の眠気や居眠りが主な症状になる病気として、睡眠不足症候群、閉塞性睡眠時無呼吸、周期性四肢運動障害、過眠症(ナルコレプシーなど)を挙げ、生活を見直しても日中の眠気が続く場合は医師に相談するよう勧めています[1]。相談先は、かかりつけ医や、睡眠を専門に診る医療機関などです。
出典・注意書き
基準日:2026年10月時点
- 厚生労働省(健康づくりのための睡眠指針の改訂に関する検討会). 健康づくりのための睡眠ガイド2023(令和6年2月). https://www.mhlw.go.jp/content/001305530.pdf
- 厚生労働省健康局. 健康づくりのための睡眠指針2014(平成26年3月). ※2023年のガイドに改訂される前の資料 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000047221.pdf
- Leong RLF, Lo JC, Chee MWL. Systematic review and meta-analyses on the effects of afternoon napping on cognition. Sleep Med Rev. 2022. PMID: 36041284 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36041284/
- Dutheil F, et al. Effects of a Short Daytime Nap on the Cognitive Performance: A Systematic Review and Meta-Analysis. Int J Environ Res Public Health. 2021. PMID: 34639511 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34639511/
- Mesas AE, et al. Is daytime napping an effective strategy to improve sport-related cognitive and physical performance and reduce fatigue? A systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials. Br J Sports Med. 2023. PMID: 36690376 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36690376/
- Brooks A, Lack L. A brief afternoon nap following nocturnal sleep restriction: which nap duration is most recuperative? Sleep. 2006. PMID: 16796222 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16796222/
- Hayashi M, Masuda A, Hori T. The alerting effects of caffeine, bright light and face washing after a short daytime nap. Clin Neurophysiol. 2003. PMID: 14652086 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14652086/
- Reyner LA, Horne JA. Suppression of sleepiness in drivers: combination of caffeine with a short nap. Psychophysiology. 1997. PMID: 9401427 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9401427/
- Yamada T, Hara K, Shojima N, Yamauchi T, Kadowaki T. Daytime Napping and the Risk of Cardiovascular Disease and All-Cause Mortality: A Prospective Study and Dose-Response Meta-Analysis. Sleep. 2015. PMID: 26158892 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26158892/
- Wang M, et al. Association between self-reported napping and risk of cardiovascular disease and all-cause mortality: A meta-analysis of cohort studies. PLoS One. 2024. PMID: 39413101 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39413101/
- Zhong G, et al. Daytime napping and mortality from all causes, cardiovascular disease, and cancer: a meta-analysis of prospective cohort studies. Sleep Med. 2015. PMID: 26051864 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26051864/
根拠の強さの表示:強い=複数の研究をまとめた分析・診療ガイドライン/中くらい=ランダム化比較試験/弱い=観察研究/参考=公的資料の目安・専門家の意見など。詳しくはこちら
ご注意
- この記事は一般的な健康情報で、診断や治療に代わるものではありません。持病のある方・治療中の方・妊娠中の方は、主治医にご相談ください。
- 昼寝の効果を調べた研究の多くは、健康な若い成人を対象に実験室で行われたものです。年齢や体調、仕事の内容によって結果が当てはまらない場合があります。
- 長い昼寝と病気・死亡の関連は観察研究によるもので、昼寝が原因であるとは示されていません。
- 「睡眠指針2014」は2023年のガイドに改訂される前の資料です。昼寝の時間の目安として紹介しています。