「1日に何歩歩けばいいの?」「1万歩は必要?」。歩数の目安には、8,000歩、1万歩などいろいろな数字が出回っています。この記事では、厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」[1]、国民健康・栄養調査の最新の結果[2]、歩数と健康の関係を調べた論文(PubMed)をもとに、目安の数字がどこから来ているのかと、平均と比べた自分の位置、無理のない増やし方を整理しました。
1日の歩数の目安は何歩?(厚生労働省のガイド)
いちばん多い疑問への答えから。厚生労働省が2024年1月に公表した「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」は、歩数の目安を次のように示しています[1]。
| 対象 | 身体活動の推奨 | 歩数に直すと |
|---|---|---|
| 成人 | 歩行またはそれと同じくらい以上の強さの身体活動を、1日60分以上 | 1日約8,000歩以上 |
| 高齢者 | 歩行またはそれと同じくらい以上の強さの身体活動を、1日40分以上 | 1日約6,000歩以上 |
根拠:強い この推奨は、国内外のコホート研究(人々を長く追いかける研究)をまとめた分析をもとに決められた、国のガイドの推奨です[1]。
あわせて押さえておきたいのが、同じガイドの「全体の方向性」です。ガイドは、「個人差を踏まえ、強度や量を調整し、可能なものから取り組む」「今よりも少しでも多く身体を動かす」ことを基本に置いています。Q&Aでも、推奨の数字は「あくまでも目安」で、望ましい身体活動量は人それぞれだとしています[1]。8,000歩に届かないからといって、歩くことに意味がないわけではありません。
なお、「高齢者」「成人」を何歳で分けるかについて、ガイドは「特定の年齢で区切ることは適当でなく、個人の状況に応じて取組を行うことが重要」としています[1]。体力のある高齢者は、成人と同じ量(1日60分以上・約8,000歩以上)を目標にしてよい、とも書かれています。
8,000歩・6,000歩はどこから来た数字?
8,000歩という数字は、「歩数を数えた研究で8,000歩がよかった」という単純な話ではなく、体を動かす量(身体活動量)の推奨値を、歩数に置きかえたものです。ガイドの説明を順に追うと、次のようになります[1]。
- 成人の身体活動量の推奨は「3メッツ以上の強さの身体活動を週23メッツ・時以上」。メッツは安静に座っているときの何倍のエネルギーを使うかを表す単位で、歩行は3メッツです。
- この推奨値は、生活習慣病の発症予防に効果のある身体活動量の下限を調べた研究のレビューで、下限が週19〜26メッツ・時に分布し、その平均が週23メッツ・時だったこと、日本人の研究に限った分析でも週22.5メッツ・時より多い人で効果が期待できたことから決められています。
- 毎日60分歩けば、ほぼ週23メッツ・時になります。ガイドの換算では、60分の歩行が約6,000歩、家事などの3メッツ未満の生活活動が1日約2,000歩。合わせて1日約8,000歩です。
- 高齢者は「週15メッツ・時以上」が推奨で、40分の歩行が約4,000歩、生活活動が約2,000歩、合わせて約6,000歩です。
つまり8,000歩は「歩く・家事・通勤など、1日の動き全部を合わせた数」です。ウォーキングの時間だけで8,000歩を稼ぐ必要はありません。
参考 国の健康づくり計画「健康日本21(第三次)」でも、「日常生活における歩数の増加」が目標の一つになっています。ガイドに載っている目標値(令和14年度)は、20〜64歳で男女とも8,000歩、65歳以上で男女とも6,000歩、全体で7,100歩です[1]。
年代別・男女別の平均歩数(令和6年の国の調査)
では、実際に日本人はどれくらい歩いているのでしょうか。厚生労働省が2025年12月に公表した「令和6年国民健康・栄養調査結果の概要」では、20歳以上の歩数の平均値は1日7,071歩(男性7,763歩、女性6,495歩)でした[2]。
| 年代 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 20〜29歳 | 8,802歩 | 7,414歩 |
| 30〜39歳 | 8,880歩 | 6,667歩 |
| 40〜49歳 | 8,671歩 | 7,259歩 |
| 50〜59歳 | 8,472歩 | 7,526歩 |
| 60〜69歳 | 8,015歩 | 6,852歩 |
| 70歳以上 | 6,219歩 | 5,140歩 |
| (再掲)20〜64歳 | 8,564歩 | 7,287歩 |
| (再掲)65歳以上 | 6,667歩 | 5,429歩 |
| 20歳以上の全体 | 7,763歩 | 6,495歩 |
出典:厚生労働省「令和6年国民健康・栄養調査結果の概要」図12(20歳以上、性・年齢階級別、全国補正値)[2]。三次元加速度センサー式の歩数計で測定。歩数計を1日つけていなかった人、100歩未満・5万歩以上の人は除かれています。
表から読み取れるのは、次のような点です。
- 男性は20〜60代の平均がおおむね8,000歩台で、70歳以上で大きく下がります。
- 女性はどの年代でも男性より少なく、20〜64歳の平均(7,287歩)は目安の8,000歩に届いていません。
- 65歳以上の平均は、男性6,667歩・女性5,429歩。女性は高齢者の目安(6,000歩)を下回っています。
平均はあくまで「真ん中あたり」で、同じ年代でも人によって大きな差があります。自分の歩数は、スマートフォンの歩数計アプリや歩数計で、ふだんの数日を記録してみると分かります。
歩数と健康の研究:何歩でどう違う?
歩数と健康の関係を調べた研究は、ほとんどが観察研究(歩数を測った人たちをその後何年も追いかけ、病気や死亡と比べる研究)です。「たくさん歩く人ほどリスクが低い」という関連は分かっても、「歩いたからリスクが下がった」とまでは言い切れない点に注意して読んでください。
| まとめた研究 | 分かったこと |
|---|---|
| 15のコホート・約4.7万人(中央値7.1年追跡)[3] | 歩数が少ないグループ(中央値3,553歩)と比べた死亡リスクは、5,801歩のグループで0.60倍、7,842歩で0.55倍、10,901歩で0.47倍。リスクの下がり方は、60歳以上では6,000〜8,000歩、60歳未満では8,000〜10,000歩あたりまで続いた |
| 57研究(35コホート)の系統的レビュー、うち31研究をメタ分析[4] | 1日2,000歩と比べ、7,000歩では死亡リスクが47%低い、心臓・血管の病気の発症が25%低い、認知症が38%低い、うつ症状が22%低い、転倒が28%低いなどの関連。死亡・心臓血管の病気・認知症・転倒では、5,000〜7,000歩あたりから下がり方がゆるやかになった |
| 17のコホート・約22.7万人[5] | 1日1,000歩多いごとに、死亡リスクが15%低いという関連 |
根拠:弱い いずれも観察研究をまとめた分析です。2つ目の分析では、結果の確かさ(GRADE)は多くの項目で「中程度」とされた一方、研究の数が少ない項目が多いこと、年齢別の分析がないこと、ほかの要因の影響を取り除ききれていない可能性(残余交絡)が限界として挙げられています[4]。もともと体調がよい人ほどよく歩ける、という逆向きの関係も考えられます。
それでも、複数の分析で共通しているのは、「歩数がとても少ない状態から少し増えるだけでも、リスクの差が大きい」という傾向です。これは、ガイドが「今よりも少しでも多く」を基本に置いていることとも合っています[1]。
1万歩は必要?
「1日1万歩」はよく聞く目標ですが、約4.7万人のデータをまとめた分析の著者らは、論文の冒頭で「1万歩は健康によいと広く勧められているが、それを支える根拠は乏しい」と書いています[3]。
- 根拠:弱い 上の分析では、60歳以上では6,000〜8,000歩、60歳未満では8,000〜10,000歩あたりまで、歩数が多いほど死亡リスクが低くなる関連がみられました[3]。
- 根拠:弱い 2025年の分析の著者らは、「1万歩は、より活動的な人にとっては今も目標になりうるが、7,000歩でも健康面で意味のある差と関連しており、多くの人にとってより現実的な目標かもしれない」とまとめています[4]。
- 参考 厚生労働省のガイドは、どれくらいからが「やりすぎ」になるかはまだ明らかではないとし、けがや体調に注意して無理をしないことが大切としています[1]。
まとめると、1万歩は「届かなければ意味がない」数字ではなく、余裕のある人がめざしてもよい数字です。今の歩数が少ない人は、まず国の目安(成人8,000歩・高齢者6,000歩)や、今より1,000歩多くを目標にするほうが、研究の結果にも沿った考え方といえます。
歩数を増やすと体重は変わる?
「1日何歩でダイエットになる?」という疑問も多く検索されています。ここは研究の結果をそのまま紹介します。
根拠:強い 食事の指導をせず、歩数計を使って歩く量を増やすプログラムだけを調べた9件の研究(合計307人)をまとめた分析では、体重の変化は平均でマイナス1.27kg、1週間あたりにするとマイナス0.05kgでした。期間が長いプログラムほど体重の変化が大きかったとされています[6]。ただし、1件あたりの人数が15〜106人と少ない研究の集まりです。
根拠:強い 歩数計を使った26件の研究(ランダム化比較試験8件を含む・2,767人)をまとめた分析では、歩数計を使った人はランダム化比較試験で対照の人より1日2,491歩多く歩くようになり、研究全体でBMIが0.38、上の血圧(収縮期血圧)が3.8mmHg下がっていました。1日1万歩などの歩数の目標を決めていることが、歩数が増えた大事な要因でした。一方、こうした変化が長く続くかどうかは分かっていません[7]。
つまり、歩数を増やすだけでの体重の変化は「小さめ」です。体重を減らしたい場合は、食事の見直しや筋トレとの組み合わせを考えたほうが現実的です。運動の種類による違いは有酸素運動と筋トレ、減量にはどっち?、体重が減りにくい理由は痩せない原因と見直したいポイントで詳しく整理しています。
歩数を増やすコツと、時間への換算
ガイドの換算(60分の歩行=約6,000歩)を使うと、10分歩くとおよそ1,000歩になります[1]。歩幅や速さで変わるので、あくまで目安として使ってください。
| コツ | 理由・根拠 |
|---|---|
| まずは「今より10分(約1,000歩)多く」 | ガイドは、目安に届かなくても少しでも体を動かしたほうが健康によいとし、「今よりも10分多く」(プラス・テン)を勧めている[1] |
| まとめて歩けなくてもよい | ガイドのQ&Aは、「20分以上続けないと効果がない」といった最短の時間や、最低限の回数の決まりはなく、短い時間の積み重ねでも効果が得られるとしている[1] |
| 通勤・買い物・家事でも数える | 8,000歩には家事などの生活活動の約2,000歩が含まれている。ガイドは買い物・洗濯・掃除、自転車・徒歩通勤などで身体活動を増やすことができるとしている[1] |
| 歩数の目標を決めて、記録する | 歩数計を使った研究のまとめで、歩数の目標があることが歩数の増加と関係していた[7] |
| 座りっぱなしの時間を区切る | ガイドは、長い座りっぱなしをできるだけこまめに(例えば30分ごとに)中断することが、食後の血糖値や中性脂肪などの面で大切だという報告を紹介している[1] |
| 息が弾む運動や筋トレも足す | 成人の推奨には、歩数とは別に「息が弾み汗をかく程度の運動を週60分以上」「筋力トレーニングを週2〜3日」も含まれている[1] |
体を動かす量が増えると、1日に使うエネルギーも増えます。自分の基礎代謝と1日に必要なエネルギーの目安は基礎代謝の平均と計算方法で確認できます。体の柔らかさやバランスを保つ運動を足したい方は、ヨガの効果は研究でどこまでわかる?も参考にしてください。
歩く前・歩いている間の注意
参考 ガイドは、運動の前に体調を確かめる習慣をすすめています。足腰の痛みが強い、熱がある、少し動いただけで息切れや動悸がする、胸が痛い、夏に熱中症の警報が出ている、などに1つでも当てはまる日は、無理をせず休むよう書かれています。また、歩いている間に胸の痛み、動悸、めまいやふらつき、冷や汗、関節や筋肉の強い痛みなどを感じたら、すぐに中止するよう勧めています[1]。
参考 血圧が高めの人について、ガイドは運動前の血圧が160/100mmHg以上なら散歩程度の軽い運動にとどめ、180/110mmHg以上なら運動は控えて休むとしています[1]。健康診断で血圧や血糖の数値を指摘された方は、健康診断の結果の見方で判定の意味もあわせて確認してみてください。
医療機関に相談したい目安
- 歩いているときに、胸の痛みや締めつけられる感じ、動悸、冷や汗、めまい・ふらつきが出る(その場で歩くのをやめ、症状が続く・強い場合は早めに受診を)
- 少し歩いただけで、以前より強い息切れがする
- 膝・腰・足の痛みが続き、歩く量を増やせない、または歩くと悪化する
- 高血圧・糖尿病・心臓の病気などで治療中、または運動について医師から注意を受けている(歩く量を大きく増やす前に、かかりつけの医師に相談を)
- 転びやすくなった、歩く速さが急に落ちたと感じる
厚生労働省のガイドは、運動中に胸痛・動悸・めまいなどの異変を感じたらすぐに中止すること、体調に問題がある日は休養をとり、必要に応じて医療機関を受診することを勧めています。持病のある人については、かかりつけの医師などに確認してから運動を始めるよう書かれています[1]。
出典・注意書き
基準日:2026年11月時点
- 厚生労働省(健康づくりのための身体活動基準・指針の改訂に関する検討会). 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023(令和6年1月). https://www.mhlw.go.jp/content/001194020.pdf
- 厚生労働省. 令和6年国民健康・栄養調査結果の概要(「2.歩数の状況」図12). https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001603146.pdf(公表ページ:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_66279.html)
- Paluch AE, et al. Daily steps and all-cause mortality: a meta-analysis of 15 international cohorts. Lancet Public Health. 2022. PMID: 35247352 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35247352/
- Ding D, et al. Daily steps and health outcomes in adults: a systematic review and dose-response meta-analysis. Lancet Public Health. 2025. PMID: 40713949 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40713949/
- Banach M, et al. The association between daily step count and all-cause and cardiovascular mortality: a meta-analysis. Eur J Prev Cardiol. 2023. PMID: 37555441 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37555441/
- Richardson CR, et al. A meta-analysis of pedometer-based walking interventions and weight loss. Ann Fam Med. 2008. PMID: 18195317 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18195317/
- Bravata DM, et al. Using pedometers to increase physical activity and improve health: a systematic review. JAMA. 2007. PMID: 18029834 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18029834/
根拠の強さの表示:強い=複数の研究をまとめた分析・診療ガイドライン/中くらい=ランダム化比較試験/弱い=観察研究/参考=公的資料の目安・専門家の意見など。詳しくはこちら
ご注意
- この記事は一般的な健康情報で、診断や治療に代わるものではありません。持病のある方・治療中の方・妊娠中の方は、運動の量を変える前に主治医にご相談ください。
- 平均歩数は国民健康・栄養調査の全国の平均値で、個人の目標や評価を示すものではありません。
- 歩数と死亡・病気のリスクの関連は主に観察研究によるもので、歩数を増やせば同じだけリスクが下がると示されたものではありません。
- 「10分で約1,000歩」は、厚生労働省のガイドの換算(60分の歩行=約6,000歩)から計算した目安です。歩幅や歩く速さによって変わります。



